2025年7月版|新規民泊登録・廃業の動向と背景分析

2025.09.04民泊市場

2025年7月版|新規民泊登録・廃業の動向と背景分析

2025年7月時点での民泊市場では、新規登録件数と廃業件数の双方に変化が見られています。

国土交通省の統計データをもとに、住宅宿泊事業の最新状況を分析し、民泊運営者や事業参入を検討する方に向けた示唆を整理しました。

今後の制度動向や予約状況の変化もふまえ、夏季、秋季繁忙期にどう対応すべきかを考察します。

 

新規民泊登録・廃業の現状と推移

国土交通省が公開している2025年7月15日時点の住宅宿泊事業に関する最新統計によると、

全国における届出住宅数は累計53,133件、廃止届出数は累計19,515件となりました。

前回の2025年5月時点(登録数:約50,700件、廃止数:約18,900件)と比較すると、

この2カ月間で登録数は約2,400件増加し、廃業数も約600件増えています。

出典:国土交通省|住宅宿泊事業の届出状況

 

登録の増加数は過去最大規模であり、依然として新規参入の勢いが続いています。

一方で、廃業のペースも一定しており、全体としての廃業率は36.7%と、ほぼ横ばいで推移しています。

出展:民泊制度ポータルサイト 都道府県別届出状況一覧R7.7.15

出展:民泊制度ポータルサイト 都道府県別届出状況一覧R7.5.15

 

登録・廃業数の最新動向

2025年7月15日時点での届出件数53,133件に対し、廃止届は19,515件。

これにより、登録件数の純増は約33,600件程度となります。

5月以降の増加数(+2,400件)は、全国的に新たな民泊事業の立ち上げが活発化していることを示しています。

廃業件数も約600件増加しており、採算性や地域制度への対応が困難な物件の整理が継続していると見られます。

これらの動向は、月ごとの統計を追うことで傾向の把握が可能です。

 

登録・廃業推移の傾向分析

全体の廃業率は、過去数年間を通じて36~38%前後で安定しています。

今回もこの傾向に沿っており、短期的な変動よりも、中長期的な政策や市場ニーズの影響が主因と考えられます。

 

注目すべきは、登録件数の伸びが過去最大規模であった点です。

背景にはインバウンド観光の本格回復や、各自治体による観光推進政策の再強化が影響していると考えられます。

 

また、都市部と地方、または法人運営と個人運営といった事業者区分ごとに、登録・廃業の傾向には違いが見られます。

とくに都市部では、運用体制や価格競争力を備えた法人が登録を牽引する一方、

地方部や副業的な運営者の中には、撤退するケースも散見されます。

 

2025年5月から2025年7月にかけての全国推移まとめ

2025年5月から2025年7月にかけての全国届け出件数推移

届出住宅数は約2,300戸増加

廃止届出住宅数は約600戸増加

 

背景要因の分析

2025年7月時点での民泊登録数の増加と廃業の並行的な推移には、複数の背景要因が存在します。

まず制度面では、住宅宿泊事業法に基づく届出制度が定着し、手続きの簡素化やサポートサービスの充実により新規参入が促進されています。

一方、廃業が続いている背景には、消防設備基準や近隣トラブル対策など、運営における法令順守のハードルが挙げられます。

 

外部環境としては、インバウンド回復に伴う宿泊需要の高まりが追い風となる一方で、人手不足や原価高騰、エネルギー価格の上昇が運営負担を強めています。

また、特区民泊の今後の見直し検討や、地方自治体ごとの規制強化も事業継続への懸念材料となり得ます。

こうした制度・環境の変化に対し、柔軟かつ迅速に対応できるかが今後の生き残りの鍵となるでしょう。

 

今後の市場見通しと運営者への示唆

今後の市場見通し

2025年後半の民泊市場は、引き続き登録件数の増加が見込まれる一方で、地域や制度による動きが運営者に大きな影響を与える局面を迎えています。

特に注目すべきは、大阪市で検討されている特区民泊制度の受付停止の動向です。

この制度変更が実現すれば、一定数の新規登録が抑制される可能性があります。

しかし一方で、制度改正前の駆け込みによって一時的に届出数が急増するシナリオも想定されます。

加えて、東京や福岡など他の大都市圏でも条例の見直しや独自規制が強化される動きがあり、民泊業界にとってはより高い事業戦略性と法令対応力が求められる時代に突入しています。

 

市場規模と供給動向

訪日外国人旅行者数は2025年上半期も順調に回復しており、宿泊需要は地方都市や観光地にも拡大しています。

これに伴い、全国的に民泊施設の供給数も上昇傾向にありますが、地域によってはホテルや簡易宿所との競合が激化しており、価格競争やレビュー対策が重要性を増しています。

 

運営者が備えるべき視点

今後、民泊運営者は「制度変更への即応」「差別化された空間づくり」「適正価格での安定運営」の三点を柱とした経営判断が不可欠です。

とくに大阪市で特区民泊を検討している事業者は、今後の条例変更に備えて情報収集を徹底する必要があります。

また、民泊事業に関する地域説明会やコンサルティング支援を活用することで、制度対応の精度向上が図れるでしょう。

 

【7月の特集】この夏は予約の入りが悪いと感じたホストも多数

2025年7月は一部のエリアで「思ったより予約が入らない」と感じた運営者も多く見られました。

その要因として、観光トレンドの分散化、物価上昇による旅行控え、宿泊プラットフォーム上での競争激化が挙げられます。

閑散期に備えた販促施策や、オフピーク時のプロモーション展開も今後の重要課題です。

 

おわりに

2025年7月時点の民泊市場は、新規登録の増加と並行して廃業も進む、流動性の高い局面にあります。

制度変更や需要変動に柔軟に対応する力が、今後の民泊運営において重要なカギとなるでしょう。

公的データに基づいた定点観測を活かし、自身の運営戦略を再構築する好機と捉えることが求められます。

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榊原 啓祐
ハウスクリーニングや壁紙再生事業でフランチャイズ本部事業等を立ち上げ、僅か5年で400店舗以上を出店。民泊事業には2015年8月に参入し、現在では民泊運営と共に、リゾート地での貸別荘もスタート。ハウスクリーニングの経験から、民泊清掃の第一人者でもあり、これからの民泊業界を牽引する若き経営者。