2025年5月版|新規民泊登録・廃業の動向と背景分析
2025.07.04民泊市場2025年5月時点における民泊市場の最新動向が、国土交通省から公表されました。
新年度のスタートに伴い、新規登録件数は前月より増加傾向にあり、一方で廃業件数も引き続き一定数見られます。
コロナ禍以降の観光回復や規制緩和の影響を背景に、民泊事業者の動向は大きく変化しています。
本記事では、5月15日時点の統計データをもとに、新規施設の増加と廃業の内訳を分析し、その背景と今後の市場展望をみていきます。
新規民泊登録・廃業の現状と推移
こちらでは国交省の公的統計に基づき、定点観測的に登録、廃業データを提示、最新動向について触れていきます。
出展:民泊制度ポータルサイト 都道府県別届出状況一覧R7.5.15
出展:民泊制度ポータルサイト 都道府県別届出状況一覧R7.3.14
登録・廃業数の最新動向
2025年5月15日時点で、住宅宿泊事業法に基づく届出住宅数は累計50,746戸に達しました。
これは、2025年3月14日時点の48,686戸から約2,000戸の増加となっており、新年度開始に伴う新規参入の動きが読み取れます。
一方、廃止届出住宅数は18,883戸であり、前回の18,368戸から約500戸の増加が確認されました。
月単位での変動は小幅ではあるものの、登録・廃止ともに継続的な動きが続いています。
これらの推移は、民泊事業者の入れ替わりが引き続き活発であることを示しています。
尚、前年同条件では届出住宅数が約700戸増加、廃止が300戸増加であることから、前年に比べて市場は大きく動いていると考えられます。
登録・廃業推移の傾向分析
登録住宅数50,746戸に対して、廃止届出住宅数は18,883戸であり、累積の廃業率は約37.2%に上ります。
これは2025年3月時点の約37.7%(48,686戸中18,368戸)と比較してわずかに下落しており、2025年5月は廃止よりも開始の方が割合として多かったことが見て取れます。
地域によっては廃業比率が高くなる傾向も見られ、事業環境や需要の差が事業継続性に影響している可能性があります。
2025年3月から2025年5月にかけての全国推移まとめ
届出住宅数は約2,000戸増加
廃止届出住宅数は約500戸増加
背景要因の分析
民泊に関連する制度をはじめ、外部環境や需要面などといった要因に基づく分析を解説いたします。
2025年5月時点における民泊登録・廃業の動きは、新年度の開始に伴う新規参入と、地域ごとの需要差が交錯した結果と考えられます。
約2,000戸の新規登録は、観光需要の回復やインバウンド再加速を見据えた新たな投資の現れといえるでしょう。
一方で、廃業件数も約500戸増加しており、物件立地や収益性、オペレーション負荷の高さなどが継続を阻む要因となっている可能性があります。
しかし、直近の民泊市場では事業譲渡も活発になってきていることから、廃止理由の一部にこれらが含まれるため、一概に「撤退」と言う訳ではないと考えられます。
累積廃業率はわずかに低下し、登録数が上回る状況が継続していることから、市場は再成長局面にあると読み取れます。
今後の市場見通しと運営者への示唆
市場規模と供給動向
観光業の再活性化により、宿泊インフラ全体の供給は今後も拡大する見込みです。
民泊においても、訪日外国人旅行者の回復や長期滞在ニーズの高まりを背景に、新規登録が継続する可能性があります。
しかしながら、物件の増加が需給バランスを崩すリスクも存在します。
立地や施設品質、運営力に差がある中で、稼働率の格差が広がることが懸念されます。
ただし、一方で行政側の体制が充実しているわけではなく、届出の受付も1~2ヶ月前の予約が必要な自治体もあることから、倍に増えるなどの急激な変化はないかと予想されます。
運営者が備えるべき視点
民泊事業を長期的に安定させるには、法令順守を前提とした運営体制の構築が不可欠です。
そのうえで、地域との連携やマーケティング力の強化が差別化の鍵となります。
特に、地域体験の提供やデザイン性のある施設設計、レビュー獲得に向けた施策は、競争優位を確立する要素となるでしょう。
また、複数チャネルでの集客や、SNSを活用したブランディングも有効です。
運営者には、単なる空室提供にとどまらない価値創出が今後求められていきます。
【5月の特集】新年度初月の動きにみる民泊業界
新年度となる4月〜5月は、毎年一定数の新規民泊施設の登録が見られる傾向にあります。
2025年も例外ではなく、副業を目的とした個人、新築物件を活用する法人による参入が目立ちました。
一方、4月〜5月にかけての廃業届出の中には、収益性の低下やレビュー評価の低迷を背景とした自主撤退も含まれており、市場の競争と淘汰が同時に進行している様子がうかがえます。
おわりに
2025年5月時点の統計からは、民泊市場が成長と一定の退出を繰り返しながら推移していることが明らかとなりました。
前年同条件と比較して、届出住宅数が約3倍、廃止が約1.5倍に増加していることから、市場は大きく動いていると言えるでしょう。
新規登録が継続する一方で、運営力や環境に応じた廃業も並行して進んでいます。
こうした中で、持続的に運営を行うためには、制度理解と運営体制の強化、さらに顧客体験を意識した差別化戦略が不可欠です。
次回7月には観光需要の高まりを控え、登録・撤退いずれの動向も加速する可能性があり、引き続き注視が必要です。


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